宇宙廃棄計画

産業廃棄物や放射能汚染物質が増えている。
各国はそれらを処分するために、ありとあらゆる方法を用いてきたが、
それもそろそろ限界が近づいてきたようだ。
 
 
 

そんなとき、ある科学者集団と企業、それにNASAが協力して、
産業廃棄物や放射能汚染物質を宇宙へ捨てる計画を立てた。
地球の引力の向こう側へ行き、太陽系の向こう側まで捨ててしまえば
地球上から廃棄できる!
 

科学者たちは、そう考えた。
 
 
 

計画はすぐさま実行へと移された。
巨大なロケットを造り、それに可能な限りの産業廃棄物を積み込んだ。
ロケットは大きな音とともに空へ飛び立ち、
大気圏も無事に突破し、宇宙空間へ飛び出した。
 
 
 

計画は何度も実行された。
何度も、何度も。
 
 
 

やがて、地球上の産業廃棄物の大半は宇宙空間へと消えていった。
 
 
 

計画が順調に進んだことを受けて、次は放射能廃棄物の処理を行うことになった。
放射能汚染物質の廃棄は、産業廃棄物よりも慎重を要した。
放射能漏れだけは絶対に避けなければならないからだ。
 
 
 

とは言え、人類の技術はその問題を難なくクリアした。
放射能汚染物質も、順調に宇宙へと廃棄されるようになった。
 
 
 

やがて、放射能汚染物質は作られるとすぐさま宇宙へと廃棄される時代になった。
地球上からは産業廃棄物も放射能汚染物質も、ほぼゼロになっていった。
 
 
 

人類はこの素晴らしい計画をさらに拡大させた。
そう、核兵器を宇宙へ廃棄する計画を立てたのだ。
 
 
 

産業廃棄物よりも、放射能汚染物質よりも、核兵器の宇宙廃棄には
さらに慎重にならざるをえなかったが、人類はこれもなんなくクリアした。
 
 
 

やがて、地球上からは核兵器もなくなった。
人類は大いに喜んだ。
 
 
 

めでたし、めでたし。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

あれから10年。。。
 

相変わらず生み出される産業廃棄物や放射能汚染物質は
相変わらず宇宙空間へと廃棄されていた。
 
 
 

その頃、10年前に廃棄された核兵器のひとつが、
太陽系よりも遥か遠く、何億光年も遠くで爆発を起こした。
原因はわかっていないが、人類はそれを大して気にも留めなかった。
実際、科学者たちの計算では、地球には何の影響もないとのことだったからだ。
 
 
 

…地球から何億光年も遠くで起こったその爆発は
周囲の星を、ほんの少しだけ傷つけた。
そのほんの少しの傷は、小さな星たちの軌道をほんの少しだけ変えた。
ほんの少し、距離にして数メートル。
広い宇宙にとって、数メートルはほんとに小さなことだった。
 
 
 

しかし、その小さなことは少しずつ大きくなっていった。
数メートル起動がずれたことによって、
小さな星が、大きな星の軌道に入り込んでしまった。
小さな星は大きな星に衝突し、大きな星は壊滅的なダメージを受けてしまったのだ。
 
 
 

大きな星がひとつ消滅したことにより、
太陽系の外の銀河の星たちはそれまでの軌道を大きく外れるようになってしまった。
 
 
 

数年後。
 

最初に影響を受けたのは…海王星だった。
海王星に、海王星と同じくらいの大きさの隕石が衝突したのだ。
 
 
 

・・・もう手遅れだった。
海王星が消滅しかけたころ、その他の太陽系の惑星の軌道が
大きく変わってしまったのだ。
 

地球は太陽の引力圏内から外れることが判明した。
暗く、冷たい宇宙空間に、星ごと投げ出されるのだ。
その途中で、他の惑星にぶつかって、消えてしまうかもしれない。
が、人類はそんなことはどうでもよかった。
いずれにせよ誰一人として助からないことがわかっていたからだ。
 
 
 

やがて人類は、考えることをやめてしまった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

・・・中学生の頃さ。
産業廃棄物とか、放射能汚染物質、核兵器の処分に困ったら
宇宙に捨てちゃえばいいんじゃね?と考えたことがあったんだよ。
 

で、その妄想を徐々に膨らませていったら・・・
上に書いたような結果になっちゃったわけ。
 
 
 

実際にはそんなことにはならないのかもしれないけどさー、
万が一、そんなことになったら…怖いね。怖い怖い。